コラム② 「対人援助職に必要な力とは」~専門知識や技術だけでは届かない、ノンテクニカルスキルの重要性~

対人援助職に必要な力と聞くと、まず専門知識や専門技術を思い浮かべる人が多いかもしれない。
もちろん、それらは欠かすことのできない大切な土台である。病気や障がい、制度、生活支援の方法を知らなければ、適切な支援を提供することは難しくなる。

しかし、現場でさまざまな人と関わっていると、知識や技術だけではうまくいかない場面に何度も出会う。
正しいことを伝えているはずなのに相手に届かない。
相手のためと思って関わったのに、かえって関係がこじれてしまう。
多職種で話し合っているのに、なぜか支援の方向性がそろわない。
こうした経験は、対人援助職であれば誰もが一度は感じたことがあるのではないだろうか。

そこで重要になるのが、ノンテクニカルスキル、いわゆるヒューマンスキルである。

これは専門的な知識や手技そのものではなく、コミュニケーション、チームワーク、状況認識、意思決定、リーダーシップなど、人と関わりながら仕事を進めるために必要な力のことである。対人援助の現場では、この力が支援の質を大きく左右する。

対人援助職における「対人」は、利用者や家族との関わりだけではない。職場の同僚、多職種、関係機関との連携もまた、重要な対人場面である。相手の思いを受け止め、自分の考えを伝え、互いの背景を理解しながら関係をつくるという点では、ケアも多職種連携も同じである。
私が特に大切だと感じている力は、セルフコントロール、コミュニケーション、リフレクション、そして協働する力である。

まず、セルフコントロールの力である。
支援の現場では、自分の思い通りに物事が進まないことが多い。利用者や家族の言葉に戸惑うこともあれば、職場内のやり取りで感情が揺れることもある。その時に、自分の怒りや焦り、不安に気づけるかどうか。感情をなくすのではなく、感情に飲み込まれずに関わる力が求められる。

次に、コミュニケーションの力である。
これは単に話が上手いということではない。相手の言葉の背景にある思いや不安を聴くこと、自分の考えを相手に伝わる形に整えること、相手の立場に立って言葉を選ぶことである。傾聴や共感的理解は、優しさだけでできるものではない。相手の状態や状況を理解し、自分の反応を調整しながら関わる専門的な技術でもある。

三つ目は、リフレクションの力である。
うまくいかなかった支援を「相手が悪い」「忙しかったから仕方ない」で終わらせてしまうと、次につながらない。
あの時の自分の言い方はどうだったか。
相手の反応をどう理解したか。
チームの中で必要な共有はできていたか。
自分の関わりを振り返る習慣は、支援者としての成長に直結する。

そして、協働する力である。
以前、不安の強い高齢の利用者への支援で、家族や支援者に何度も電話をかけて訴えられるケースがあった。周囲から見ると些細に思える心配事でも、本人にとっては切実である。一方で、対応する側からは「何度も電話が来て仕事にならない」という声も出ていた。親身に対応したい気持ちはあっても、疾病理解や対応方法が共有されていなければ、支援者の疲弊につながる。

このケースでは、本人の不安の背景を整理し、電話対応のルール化を行い、ケアマネジャーへの助言や訪問看護との情報共有を重ねた。最終的には、より専門性を活かせる体制へと調整し、事業所内外の連携を整理することで支援の形が少しずつ整っていった。

この経験から感じるのは、多職種連携とは、単に情報を共有することではないということである。誰が、何を、どこまで担うのか。本人の困り事だけでなく、支援者が何に困っているのか。そこを丁寧に整理することも、対人援助職に求められる大切な役割である。

対人援助職に必要な力は、生まれ持った性格やセンスだけで決まるものではない。専門知識や専門技術を学ぶように、ノンテクニカルスキルもまた、意識して学び、現場で試し、振り返ることで少しずつ磨かれていくものである。

支援の質を高めるためには、まずは自分の関わり方を見つめ直すこと。そして、目の前の人に何を伝えたかだけでなく、どのように受け止め、どのように向き合ったのかを振り返ることが大切である。その積み重ねこそが、対人援助職としての本当の力を育んでいくのである。

作業療法士 野崎 健

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